好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
ブブブ ブブブ
携帯の着信。

え?
発信者を見て息が止まりそうになった。

嘘、だろ。萌夏からの着信だ。

ピッ。
携帯の通話ボタンを押し、俺は自分の部屋のに向かって駆けだした。

切られたら困るから早く出たい。
それでもまだ不確かな情報で、母さんを翻弄したくはない。
もし悪い知らせなら、配慮して伝えないと。



ふーう。
部屋に戻り、ゆっくりを一息吐いてから俺は携帯を耳に当てた。

「か・・遥?ねえ、聞こえているの?」
聞こえてきたのは少し大きくなった萌夏の声。

「ああ・・・聞こえている」
聞いた瞬間、俺はその場に座り込んでしまった。

「よかった。返事が聞こえないから切れたのかと思ったじゃない」
いつもと変わらない元気な萌夏。

「お前なあ」

言いたいことはたくさんあるのに、力が入らない。
俺はこんな腑抜けた人間ではないはずなのに。

「ねえ遥、大丈夫?」
今度は心配そうな声。

「大丈夫なわけあるか。二日も音信不通で、連絡しても出ないし、どれだけ心配したと思っているんだ」
「ごめんなさい」
「ごめんですむかっ」
「だから・・・」
電話の向こうの声が、少し涙声になっている。

ダメだ、落ち着け。
誰よりも萌夏自身が心細いはずだ。
その萌夏を追い込んでどうするんだ。

俺は冷静でいようと必死に深呼吸を繰り返した。
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