好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「僕はね、若いころモデルの仕事をしていたんだ」
「モデルですか?」
「そう、意外だろ?」
「ええ、まあ」

確かにおじさまは整ったきれいな顔をしていると思う。
身長も180センチ以上はありそうだし、スタイルだって悪くはない。
今この年齢でこれだけ素敵なんだから、若いころはもっとかもしれない。
モデルだったと聞いても不思議には思わない。
ただ、日本代表する名家桜の宮家の婿にしては意外な職歴の気がした。

「家内と皐月さんは2人っきりの姉妹でとても仲が良かったんだ。長女である皐月さんが家を継ぎ、家内はしかるべき家に嫁に行くもの。そう育てられたんだがね」
「母が家を出てしまったんですよね」
「そう。家内からすれば青天の霹靂だったんだろうと思うよ」
「でしょうね」

母さんだって一大決心だったろうけれど、残された家族はもっと大変だったはず。

「皐月さんがいなくなれば家内しか家を継ぐ人間はいなくなるわけで、否応なしに彼女が婿を取ることになってしまった」

それは、おばさまもかわいそう。

「当時、家内も相当反抗したらしいよ。子供の頃から総領娘として特別に育てられたくせに、いざとなったら責任を放棄して逃げてしまった皐月さんを恨んだと言っていた」

そりゃあそうよ。
はいわかりましたと即答できる話ではない。

「そこでお父さんやお母さんが必死に説得して、『何でも言うことを聞いてやる。お前の好きな人なら誰でもいいから婿にしてやる』と言ったらしいんだ」
「へえー」

それはまた思い切ったことを、って、もしかして。

ククク。
「そう、そこで白羽の矢が立ったのが僕。一面識もなく、ただファンだって理由だけでね」
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