好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「それで、お相手はどんな方なの?」

数か月ぶりに帰った実家のマンションで、母さんの手料理を前にさあ食べようとなった時母さんが口を開いた。

「まだちゃんと付き合っている訳ではないんだ。時期が来たら紹介するから」

本当に、めんどくさい人が告げ口してくれたものだ。
礼の気持ちがはっきりするまでは黙っていたかったのに。

「お、餃子かあ。旨そうだな」
「ええ、珍しく三人そろったし。それに、二人とも好きでしょ?」

ホットプレートにぎっしりと並んだ餃子。
俺もおじさんも母さんが作る餃子が好きだ。
確か遥の家のおばあ様直伝って言っていたっけ、平石家の味ってわけだ。


「じゃあ、いただこうか」
「「いただきます」」

小さいころから夕食は三人で食べていた。
どんなに忙しくても夜になればおじさんが帰ってきて、夕食を食べ、小学生の頃は一緒にふろに入り勉強を見てくれた。
母さんは口やかましくてすぐに小言を言うけれど、おじさんはいつも俺の味方で笑ってくれていた。

「うん、やっぱり旨いな」
焼きあがった餃子を頬張るおじさん。

俺も習って餃子を口に入れ、ビールを開けた。

「あら、飲まないの?」
おじさんの前のビールが開いてないのに気付いた母さんが声をかける。
「ああ、仕事を少し持って帰ったんだ」
「そう」

きっとおじさんは忙しいのに、俺のために無理して帰ってきたんだろう。
こうなるのが嫌だから、おじさんとの関係は隠して一般入社を希望したんだが・・・
つい出そうになった愚痴もビールとともに飲み込んだ。
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