信じてもらえないかもしれませんが… あなたを愛しています
「すまない、一度東京に行ってくる。」
「そうね、もう体調は問題ないし体重だって戻ったわ。」
「北海道に住んだら太りそうだな。」
「あら、真由美さんの料理が美味しいからよ。」
「君の作る食事も美味しかったよ。」
「お上手ね。あなたもお世辞言えるのね。」
彩夏との他愛のない会話が楽しい。
二人でいるのが当たり前になっていたから、東京での生活が億劫だった。
「彩夏…俺たちの結婚生活の形を考えよう。
どういう風に暮らすのがお互いにベストなのか…
今度こっちに来た時こそ、二人で話をしよう。」
「樹さん…。」
「離婚はしない。絶対に。」
「………。」
家を出る直前に、樹はやっと彩夏に思いを伝え彼女を抱きしめた。
「直ぐに帰ってくる。」
玄関ポーチで樹を見送ったまま、彩夏はじっとその場に佇んでいた。
何と返事すればよかったのか、答えが見つからなかったのだ。
樹の事は好きだ。だが、このまま東京と北海道に別れて住むとしたら
二人の関係が続けられるかどうか不安でたまらなかった。
一方的に、自分が好きなだけなら哀しい事だ。
彼からは一度も『好きだ』とも『愛している』とも言われていないのだ。
『あの人の何を信じればいいんだろう…』