信じてもらえないかもしれませんが… あなたを愛しています

 樹からの連絡は途切れがちだった。
時折メールはあるが、やはり忙しくしているのだろう。
江本も前ほど連絡をよこさない。
二人の事は二人で何とかしろという、彼女の意志かもしれない。
顔を合わせている時でも口数の少ない樹の事だ。
言いたい事や感じた事を文字にするのは苦手な人だと彩夏にも分かる。

 分かってはいたが、彩夏は物足りなさを感じていた。
いつも側にいた人がいないのは淋しい。ベッドに独りで入るのは肌寒い。

 連絡を寄こさない樹に少しイラっとするし、
逆に、無性に会いたくて会いたくてたまらなくなる。

 会話は苦手でも、何とかして連絡取ろうと思わないのだろうか。
小さい不満は彩夏の心に澱となって蓄積されていく。
信じて待っていようと思うのだが、常に不安が付きまとう。
あの10年の無関心さが再び彼を取り込んでしまったらどうしよう。

『あの人を信じたい…だけど…』

 お盆を過ぎても、樹からは挨拶文程度のコメントしか届かない。
彩夏からは結構あれこれ送るのだが、その半分も帰って来ない気がした。

『何かあったのかしら…』

いつもはおおらかな彩夏が珍しくナーバスになっていた。



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