冷徹上司の、甘い秘密。



「───俺と、別れて欲しい」



 ……私の耳がおかしくなったのかな?


 聞き間違いかと思うほどの、衝撃。



「……は?」



 思わず聞き返した私の顔は、大分歪んでいると思う。


 予想外?いやいや、そんな甘っちょろいレベルじゃない。


 まさに、青天の霹靂だった。



「……何言ってるか、自分でわかってる?」



 思わず上擦った声。視線を下げたままの優は、今にも泣きそうになっていた。



「本当に、ごめん」



 謝られたって、何を言っているのか全く理解できない。泣きたいのはこっちだ。


 叫びたい気持ちをグッと堪えて、拳を握りしめた。



「……どういうことか、一から説明して欲しいんだけど」



 どうにかそう話を促す。


 私の言葉にようやく顔を上げた優は、その目を見るだけで私の反応に怯えているのがわかった。あたりまえだ。この間プロポーズしてきたのは優なんだから。



「……実は、母さんに歩のこと、紹介しようと思って。"結婚したい人がいる"って言ったんだ。
そうしたら───」



 優の話は、こうだ。


 "結婚したい人がいる"


 そう聞いた優の母親は、驚いて一瞬動きを止めたと言う。


 その日は何も言われなかったらしいものの、何故か数日後に、大反対し始めたと言うのだ。



「……反対の理由は?」


「それが……」


「ん?」



 先を促すと、優の口から耳を疑う言葉が返ってきた。

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