冷徹上司の、甘い秘密。



「……何言ってんだよお前」


「お願いします。……さっき怖い夢見たの思い出しちゃって」


「子どもか」


「……昔から、怖い夢を見た時は誰かと一緒じゃないと寝れなくて……」



 幼稚園児みたいなことを言っているのは自分でもわかっていたが、こればっかりは昔からのなかなか抜けない癖で。


 私が腕を離さないとわかったのか、課長は数秒間口を開かずに沈黙が訪れる。


 と思ったらまた大きな溜息が聞こえて、布団が捲られて少し冷たい空気が入り込んできた。その直後に感じる、私の身を包んでくれる温かさ。


 私を抱きしめるように布団に入った課長に、自分からお願いしたくせに今更緊張してきて。


 ドクドクと高鳴る鼓動。


 ……あぁ、アルコールが回る。


 ふわりと香る課長の匂い。


 スーツ姿の時に香る男性物の香水の香りとは違う、シャンプーの香り。


 私もシャワーを借りたのだから同じ香りがするはずなのに、どうしてかそれがすごく心地良くて。


 次第にドキドキが落ち着いてきて、思わずその香りを胸一杯に吸い込みたくなって顔を課長の首元に寄せた。無意識だった。


 ビクッとほんの少しだけ肩を上げた課長に、私は寝ぼけ眼で上に視線を向ける。


 すると下を向いていた課長とピタリと視線が交わって。

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