冷徹上司の、甘い秘密。



「……」



 はぐ、と声にならない声を飲み込んだ。


 その言葉の意味がわからないほど私だって子どもじゃない。


 普段の私なら、間違いなく拒否していただろう。


 仕事関係者は万が一別れたらその後が気まずいから、今までずっと避けてきた。


 なのに会社の上司となんて、ましてや"あの"飛成課長と、だなんて。いつもの私じゃ考えられない。


 しかし今日の私はどこかおかしくて。酔いが回っているからか。怖い夢を見たからか。振られた寂しさか。課長の知らない一面を知ってしまったからか。


 ……初めて見る余裕の無い顔の課長に、欲情した。



「今なら、止められる」



 その言葉を聞き終わるかどうかのタイミングで、私は課長の首に手を回して引き寄せ、そっと唇を重ねた。



「……私に選ばせるなんて、ずるいですね」



 私の微笑みに、課長は再び唇を重ねた。

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