雨の音は、
長瀬くんはタオル片手に、またバタバタと戻ってきた。まるで昨日のことのプレイバックみたいに。
「昨日より雨が強かったから、濡れたでしょ?」
そう言って、さっき傘を落としそうになった時に濡れてしまった頭や肩を、優しく拭いてくれた。
「はい、口開けて?」
「あ、の、」
「今日はブドウ味。キライ?」
「好、き」
「じゃあ、あ~ん」
あらがえない。彼の指先が、目の前にあるから。長瀬くんの顔が、すぐそこにあるから。
長瀬くんが一歩詰め寄って、また私の頬に優しく触れる。まるで、愛しむかのように。頬から伝わる長瀬くんの手の平の熱で、私の顔も、熱くなる。
飴で唇をツンツンとつついて「はい、あけて?」と優しく囁き落とされ、恐る恐る口を開けると、甘くて丸い塊が口の中に転がり込んできた。その丸い塊を私の口に入れ終えた長瀬くんの指先が、私の下唇を優しくなぞる。
ブドウ味の飴を口に含んだまま、私は長瀬くんを見上げていた。
ずっと、ずっと、心臓がドキドキとうるさい。雨音がなかったらきっと、長瀬くんには丸聞こえだっただろう。