雨の音は、

長瀬くんはタオル片手に、またバタバタと戻ってきた。まるで昨日のことのプレイバックみたいに。


「昨日より雨が強かったから、濡れたでしょ?」


そう言って、さっき傘を落としそうになった時に濡れてしまった頭や肩を、優しく拭いてくれた。


「はい、口開けて?」

「あ、の、」

「今日はブドウ味。キライ?」

「好、き」

「じゃあ、あ~ん」


あらがえない。彼の指先が、目の前にあるから。長瀬くんの顔が、すぐそこにあるから。


長瀬くんが一歩詰め寄って、また私の頬に優しく触れる。まるで、愛しむかのように。頬から伝わる長瀬くんの手の平の熱で、私の顔も、熱くなる。


飴で唇をツンツンとつついて「はい、あけて?」と優しく囁き落とされ、恐る恐る口を開けると、甘くて丸い塊が口の中に転がり込んできた。その丸い塊を私の口に入れ終えた長瀬くんの指先が、私の下唇を優しくなぞる。


ブドウ味の飴を口に含んだまま、私は長瀬くんを見上げていた。

ずっと、ずっと、心臓がドキドキとうるさい。雨音がなかったらきっと、長瀬くんには丸聞こえだっただろう。

< 12 / 14 >

この作品をシェア

pagetop