ため息のわけを教えてください
 のろのろと進んでいくうちに、大通りに差し掛かる分岐のあたりに、タクシーが一台停まった。
「そうだ、連絡先を交換しませんか」

 イカをプレゼントされたのだから、ちょっとくらいは気持ちがあるはずだと、わたしはかなり強引な手に出てみた。不発に終わったが、昔大福さんはわたしに電話番号を渡そうとしてきたことがあった。だから、成功率は高いはずだったのに「理由がねえよ」と不可解そうな顔をしている。

 何が彼を変えたのだろう。やっぱりあの義理クッキーのことが根深く残っているのだろうか。

「もっと早く、ちゃんと言えば良かったんですけれど、本当は橋爪さんに義理なんて渡したくなかったんです。でもその前に出そうとしたクッキーが割れてて、交換しようとしたら」
「突然どうした。その話はもういいんだが。なんでそんなに俺に突っかかってくるんだ?」

「それは、す」
 言いかけて、本当に好きなのか? と改めて疑問が湧いてきた。黙り込むと、大福さんは呆れたようにため息を落とす。
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