ため息のわけを教えてください
彼はわたしの両手から逃れ「今日はとりあえず帰るぞ」と、タクシーに向かって突き進む。ドアが開くと、すぐにタクシーの中に誘導された。
大福さんはなぜか腕時計を外し始めた。
「ほれ」
突然それを渡されて、わたしは首を傾げた。
「それで払ってくれ、今現金もってねんだわ」
「え、でも」
構わずに彼は、運転手に支払いをする電子マネーの種類を告げている。かざせばすぐに決裁できるようだった。くたびれた声で「どちらまでですか」と運転手に訊かれた。「三鷹駅まで」と彼が代わりに応えている。
「じゃあな」
大福さんが車から一歩離れた。
「あ、わたしも渡したいものが」
土壇場でネクタイピンの存在を思いだし、わたしはハンカチごと彼に押しつけた。
「バレンタインです」
唖然としたままの大福さんを残して、タクシーのドアが閉まった。車が夜の街を走り出す。
わたしは背もたれに寄りかかると、今日の行動を思い返した。電話が終わるのを待ち伏せして、空腹だと嘘をついて強引に食事についていく。食べ過ぎで歩けなくなって終電を逃し、訳の分からない告白の勢いで、連絡先を聞き出そうとしたけれど失敗。タクシー代を出してまで、家に送り返される。
大福さんはなぜか腕時計を外し始めた。
「ほれ」
突然それを渡されて、わたしは首を傾げた。
「それで払ってくれ、今現金もってねんだわ」
「え、でも」
構わずに彼は、運転手に支払いをする電子マネーの種類を告げている。かざせばすぐに決裁できるようだった。くたびれた声で「どちらまでですか」と運転手に訊かれた。「三鷹駅まで」と彼が代わりに応えている。
「じゃあな」
大福さんが車から一歩離れた。
「あ、わたしも渡したいものが」
土壇場でネクタイピンの存在を思いだし、わたしはハンカチごと彼に押しつけた。
「バレンタインです」
唖然としたままの大福さんを残して、タクシーのドアが閉まった。車が夜の街を走り出す。
わたしは背もたれに寄りかかると、今日の行動を思い返した。電話が終わるのを待ち伏せして、空腹だと嘘をついて強引に食事についていく。食べ過ぎで歩けなくなって終電を逃し、訳の分からない告白の勢いで、連絡先を聞き出そうとしたけれど失敗。タクシー代を出してまで、家に送り返される。