ため息のわけを教えてください
 コンビニ以外にも多数存在している熱烈なファンの存在を知って、気が気じゃない。
「ガラス工芸の専門店でときどき作品の販売もします、だと?」

 彼らに直接会ったこともあるというのだろうか。これまでの投稿を遡って全部読まないと、不安で仕方なくなってくる。大体が、無防備すぎる。昨日だって、コンビニでやりとりをしているだけの素性の知れない男にほいほいついて行っている。相手がこの中年ならば、どうなっているかわからない。
 橋爪はスマートフォンをポケットに入れて、エレベーターホールに向かった。

「……しかし、なんだって俺なんかに」

 これまでの人生でモテたことなど一度もないし、そもそも好かれる要素もない。一目惚れされるほど顔が良いわけでもないし、気付けばすっかり中年体型だ。仕事が出来るかといえばそうでもなく、有能な部下と比べられてばかりいる。

「どうせ、一時の気の迷いだろうな」

 橋爪はふん、と鼻から息を抜き、膨らんだ腹の上で光るアオリイカに目を遣った。バレンタインのお返しなどしたことがない。けれども、これだけ手の込んだものもらって、一時の気の迷いだからと、何もしないというわけにもいかない。
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