ため息のわけを教えてください
 話をするようになれば、どうせすぐに幻滅される。相手にされるはずはない。……それでも人生で一度くらい、人から好かれるための努力をしてみるか? 

 これといった会話もないまま店を出る。この短時間で何度この道を通るんだと自虐しながら、会社に戻った。システム課に顔を出すと、坂巻は「何かありました?」と、椅子を立ち上がった。

「これ、やるよ」
 ずいと袋を突き出すと、坂巻は不思議そうな顔のまま受け取った。中身を見てありがとうございます、とは言ったが、喜んでいるというよりは、ただただ驚いているといった感じだ。

「家が近いからって、あんまり遅くなるんじゃねえぞ」
「わかりました」

 本心でそんなこと思ってたら、こんなもん買ってこねえだろ。思ったが、坂巻は言葉を素直に受け取って、はにかんだ笑みを浮かべている。なんとなく居心地が悪くなって、橋爪はすぐに背中を向けた。

「なんだ、なんだ。まるで俺が、良い奴に仕立て上げられたみてえじゃねえか」
 ぼやいてみたが、悪い気はしなかった。
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