悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
ズキンという肩の痛みで、ナタリアは目を覚ました。

吐く息は荒く、全身に汗を搔いている。

花模様の描かれた天蓋が目に映った。緑がかった畳はもうどこにもない。

(夢だったのね。たしか私、お兄様に噛まれたはず……)

こうして部屋に寝ているということは、助かったのだろう。

奇跡としかいいようがない。

「ナタリア、目を覚ましたか」

低い男の声が耳朶を打って、ナタリアはハッと横を見る。

そこには、見たこともないほど深刻な顔をしたリシュタルトがいた。

「え? お父様? どうして……」

久しぶりに見るリシュタルトに、ナタリアは動揺する。

「行くのが遅れてすまなかった」

「……お父様が、助けてくださったのですか?」

リシュタルトは何も答えなかったが、おそらくそうなのだろう。

レオンに噛まれ、意識を失う寸前、ナタリアを抱きすくめてくれたのは彼だったのだ。

「レオンの獰猛化は薬で抑えた。だが医師が言うには、薬で抑える以前に大分緩和されていたそうだ。お前がやったのだろう?」

リシュタルトの月色の瞳が、射貫くようにナタリアを見つめる。

「あ……」

ナタリアは返事を躊躇った。

リシュタルトは、ナタリアが獣操師になることに反対している。

だから獣操力を使ったナタリアを、咎めているのではないかと思ったのだ。
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