悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
そのとき頭に閃光がはじけ、鮮明な映像がナタリアの脳裏に浮かび上がった。

モフモフの黒い毛、ものすごい勢いでこちらへと迫ってくる大型トラック。

ナタリアは精いっぱい目を見開いた。

――『ああ、なんてモフモフなの……』

そうだ、たしか自分が人生の最後に発した言葉はそれだった。

残業でへとへとだった大雨の夜。

家族もいない、彼氏もいない、趣味も楽しみもない、ひたすらパソコンと向き合うだけの社畜の自分は、癒しを求めるように、目の前を横切ったもふもふの犬に見とれていた。

あの毛にモフッとしたい。

無心でそう思った直後、モフモフ犬が車道に飛び出し、とっさにかばって代わりに自分が死んだのだ。

今にして思えば、最後にモフモフを堪能できたのがせめてもの救いである。

(私、生まれ変わったってこと?)

どこからどう見ても、赤ちゃんにしか見えない自分。

よちよちと歩き、口を開けばバブバブ感溢れる言葉が飛び出す。

(ひょっとして、人生やり直しのチャンス……?)
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