悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
普段の彼も美しいが、獣化した姿はそれ以上だった。

真昼の光を受けて輝くふさふさとした銀色の毛並みに、屈強な四肢、威圧感のある胸元。

さすが、この国の頂点に立つ偉大なる皇帝。

「荷台が暴走したぞ! 大変だ!」

「怪我人はいないか!?」

異変に気付いた男たちが、厩舎から次々と出てくる。

(助かったのね……)

ナタリアの心身の緊張が、ようやくほどける。

気づけば一命をとりとめた喜びから、父の首筋に抱き着いていた。

「ありがとうございます……」

父のもふもふの毛は、柔らかくてあたたかかった。

安堵から、今さらのように、ナタリアの全身がガタガタと震える。

前世の記憶があっても、所詮は三歳児。

世の中のものは自分よりはるかに大ききて強く、怖いものだらけなのだ。
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