悪役幼女だったはずが、最強パパに溺愛されています!
「猛獣を操る職種のことですよ」

ギルは、獣操師について詳しく説明してくれた。

獣は、ときに狂暴化し、人や獣人を傷つける。

凶暴化した獣の力はすさまじく、弱い相手の場合は、死にいたらしめることもあるらしい。

だが獣は、獣人にとっては同じ子孫を持つ大事な存在。

そのためお互いが苦しまないよう、狂暴化した獣をいさめる獣操師という職種があるらしい。

といっても誰でもなれるわけではなく、獣操師になれるかどうかは持って生まれた素質が左右するのだという。

「あなたには獣に好かれる才覚がおありのようです。皇帝以外に懐かなかったロイがあなたにはすぐ懐きましたし、あなたが獣保護区にいくたびに獣たちが寄ってくるそうじゃないですか」

才覚があると言われて、ナタリアは素直に喜んだ。

「獣操師になったらどんなところで働くの?」

「ナタリア様が定期的に行かれている獣保護区をはじめ、野生の獣の多い地域や調教施設などですね。獰猛化した獣人を戒めることもできるので、国の警備や有事の際も重宝されると聞きます」

獣だけでなく、獣人も獰猛化することがある。獣よりは歯止めが利くものの、獰猛化した獣人は力も強く、獣人を恐れている人間もいた。

俄然やる気がみなぎってくるナタリア。

「どうやったら獣操師になれるの?」

「年に一回行われる認定試験に合格すればよいのです。受けられるのは十三歳からですが。合格するには才覚だけでなくそれ相応の勉強が必要ですね。かなりの倍率ですが、ナタリア様なら大丈夫でしょう」

ナタリアはまだ四歳。

ギルの言う通り今から頑張れば、十三歳での合格も夢ではないだろう。

「獣操師になるお勉強、してみたい! ギル、教えてくれる?」

ナタリアは瞳をキラキラと輝かせてギルを見上げた。

「もちろんですよ、私の王女様。ただ、あなたが獣操師になるお勉強をしていることは、誰にも口外しない方がいいでしょう。皇帝陛下にはもちろん、レオン様にも言ってはなりません」

「どうして?」

「あなたはこの国の王女です。王女が手に職をつけるなどもってのほか、という考え方が一般的ですからね。私があなたに必要のないことを教えていると知られては、家庭教師を解雇されてしまうかもしれません」

「それは困るわ! 私にはあなたが必要だもの」

ナタリアがぎゅっとギルの腕をつかむと、ギルは嬉しそうに微笑んだ。

「でしたら私たちだけの秘密にしましょう」

「わかったわ、約束よ」
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