溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

「あれ? 電気……」

 暗い廊下を進むと、リビングダイニングに続くドアから明かりが漏れていた。

 こんな時間に維心さんは起きていないだろうし、消し忘れ? それともまさか幽霊?

 怖い話は苦手なので、きっと消し忘れ出ろうと自分に言い聞かせ、そうっとドアを開けて中を覗く。

 するとソファに座る維心さんの背中が見え、なんだ、起きていたんだとホッと胸をなで下ろした瞬間。

「……博多に? 偶然だな」

 その声にビクッとして、室内に入るのを躊躇う。よく見ると彼はスマホを耳に当て、電話中のようだ。こんな時間に誰と?

 博多という言葉が聞こえたから、お父様の代わりに行く出張の件?

 私はドアを半開きにしたままその場に立ち尽くし、つい彼の話に耳をそばだてる。

「ああ、接待は一日目の夜だから、二日目の夜は時間がある。美久(みく)は?」

 どう考えても女性の名前である〝美久〟という単語を彼が発した出た瞬間、胸がねじれたように痛くなった。

 彼の口から、自分以外の女性が呼び捨てにされるのを聞くのは初めてだ。

 ねえ維心さん、美久さんって……誰?

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