溺愛まみれの子づくり婚~独占欲強めな御曹司のお相手、謹んでお受けいたします~

「悠里、どこか痛いのか?」

 苦痛によって生まれた涙と勘違いしたらしい維心さんが、心配そうに私の顔を覗く。そんなふうに優しくされるとつらくて、私は首を左右に振って、微笑んでみせる。

「平気です。……涙は、なんだか勝手に」
「なるほど、生理的なものか。俺を感じている証拠……だな」

 満足げに呟いた彼の低い声に、ぞくりとしたものが全身を駆け巡る。

 私が痛がっていないとわかって安心したのか、再び動き出した彼は先ほどより荒々しく、本能的に私を求めた。

 しかし快楽の狭間で、時々自分の中からもうひとりの自分が幽霊のように体を抜け出し、同情の目で私を見下ろしているような感覚に陥った。

 いいでしょう、別に。私は、この人が好きなんだから……。

 もうひとりの自分にそう言い訳して、気を取り直したように維心さんのくれる甘い刺激に酔う。

 大丈夫。私は幸せだ。

 何度も胸の内の呟いたその言葉が本心なのか、虚勢を張っているだけなのかは、自分でもわからなかった。 

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