溺愛過多~天敵御曹司は奥手な秘書を逃さない~
そして、私が直面したのはシビアな現実。
女に慣れたプレイボーイだって、結局見た目がいい女じゃなきゃ、手を出さない。


コンプレックスとかもっともらしい助言も、ホテルまで行ってやっぱりその気になれなかった言い訳に違いない。
私はラブホテルに一人で放置され、チェックアウトまでの二時間、たっぷり考えた。


こうなったら、痩せてやる。
それで綺麗になっても、出直したりしない。
そうじゃなくて見返してやる!と奮起して、血の滲むようなダイエットに励んだ。


あれから十年。
身の程も知らず、学内一のイケメンに抱いてくれと頼んだ、無鉄砲すぎる黒歴史を暴かれるなんて、もう正直羞恥で死ねる――。


いや、それより今はここから逃げ出すべき。
私は、なにかに打ちひしがれている社長に背を向け、乱れた胸元をササッと直した。


「聞かれたことには、ちゃんとお答えしました。シャツの染み抜きも必要ないなら、私はもう帰っていいですよね?」


早口でつっけんどんに言って、まだ収まらない動揺を誤魔化し、ベッドから飛び降りる。


「あ。おい」


ようやく我に返った様子の社長の呼びかけには耳を貸さず、バッグをひょいと肩にかけ、寝室のドア口に走った。
そこから一度だけ、キングサイズのベッドを振り返り……。


「今日のことも、昔のことも、お互い忘れましょう。では、また来週。……九重(ここのえ)社長」


一方的に挨拶して、彼の住まいであるエグゼクティブスイートルームから転がり出た。
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