不登校生徒会長率いる個性派生徒会の中では恋愛できないって噂が流れてますけど大丈夫そ?
閉め切ったカーテンから陽射しが朝を告げる。外では僅かに小鳥が囀る。

重い身体を起こすとベッドの上に置いていたスマホが落ちる。

「充電器…」
辺りを見回すが、どこにも見当たらない。
機材や漫画、服などが散乱していて探す気にもならない。

「いいや」
スマホはあまり使わない。
ゲームはほぼパソコンでしてるし、連絡を取るような相手もいない。
時計を見ると、針は午前11時を指していた。

寝巻き姿のまま部屋のドアを明け、リビングに着くと、いつも通りテーブルの上に置き手紙と1万円札が置いてある。

『帰り遅くなります。
お金置いておくので好きなものを買って食べてください。』

母の字だ。
私の家は他の家より大分放任していると思う。世間体を気にしてるくせに私には好きにさせてくれる。
まぁ、たぶん私は【いないもの】にされてるのだろう。
妹の、れまの方が優秀で両親に愛されている。たまに両親が早く帰ってくるときはリビングで家族3人元気な笑い声が聞こえる。私がいなくても、その空間はとても幸せそうだった。

なんて事をいつも考えたりしないのに今日は珍しい。
こんなことはもう恒常化してて慣れたはずなのに。

そのお金を握りしめて部屋へ向かう。
真昼間に外出なんか絶対嫌だ。

「…あ」
気づくと部屋の前には飼い犬のしょびーちゃんがいた。
しょびーちゃんは愛称で本当の名前は【初期微動継続時間】。
なんとなく好きな言葉だったから名付けたら笑われることも否定されることもなく、両親はただその犬を私に預けた。

「どうしたの?お昼寝は?」
しょびーちゃんはゴールデンレトリバーで、座ってもとても大きい。
私がしゃがむと目の高さが同じになる。

「ワンッ!」

と大きな声で鳴くと、しょびーちゃんはその場でグルグル回った。

「えぇ…まだ昼間だよ…?いつもこの時間は寝てるじゃんか…」

珍しくしょびーちゃんは散歩を訴えている。
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