あの日、小猫と出会ったから
「あのな、リフ。会ったばかりの人間をそんなに簡単に信じちゃ駄目だぞ? 世の中、良い奴ばかりじゃないんだから」
かく言う俺も、初めは稼ぎ目当ての下心ありありで声掛けたわけだし。
「だって」
リフはふっと目を伏せた。サア、と雨音が屋根を滑った。
「ジェイミーは、僕の事止めてくれたでしょ」
「それは、お前がここに泊まるっていうから」
リフは微笑んだ。泣きそうにも見える笑顔で。
「優しい人だね、ジェイミーって」
「そ、そうか?」
「うん、とっても」
そんなに褒められても、出せるのはパンのミミくらいだ。褒め損だぞ、リフ。
「ありがとう……てくれて」
小さな呟きは、風に煽られた雨音に紛れてよく聞き取れなかった。
日中の晴れ間は一時的なものだったらしい。雨はいまだに振り続けている。しかも風が出てきた。そのせいか、アイはパトロールに出かけなかった。窓枠に跳び乗って外を見ている。
俺はリフと一緒に押入れの布団に包まっていた。俺は床で寝るつもりだったんだけど、リフがどうしても一緒に寝て欲しいとごねるので、根負けした。
「しょうもない甘えっ子だな」
苦笑すると、小猫はぺろりと舌を出して笑う。
「だって、こんなの久しぶりだもん。ダグラス先生も怖かったけれど、後任のレオン先生もなかなかの人で、絶対一人でしか寝かせてくれないの。アークもレオン先生の味方だし」
「へえ」
お坊ちゃんにも苦労はあるということか。ガキの頃くらい、好きにさせてやればいいのに。どのみち時が経てば一人立ちするんだし。
「誰かが隣に居るってだけで、安心するの」
俺の腕をきゅっと掴んで、リフが呟く。
「それは分かる気がする」
どんなに辛い夜でも、アイがそばに居るだけで眠れたように。
「やっぱりジェイミーは良い人だ」
リフは嬉しそうに言う。宝物を見つけた子どものように、その笑顔はどこか得意げだ。
「ジェイミーに会えて、僕、ほんとに良かった……」
風が窓を揺らした。ぽちゃん、と雨漏りの音が聞こえた。外を見飽きたのか、アイがやって来て俺達の足元で丸くなった。
やがて、静かな寝息が聞こえてきた。小猫は幸せそうな顔をして寝ている。
「……温かい」
ぽつり、と呟いた。隣に居る温もりがふわりと眠りに誘う。あふ、と欠伸をして俺は目を瞑った。
『僕、怖くなんかないよ』
『見るなって言っても見るから』
『大好きだよ』
その夜は、いつもの問いかけが聞こえることも無く、ぐっすりと眠れた。
かく言う俺も、初めは稼ぎ目当ての下心ありありで声掛けたわけだし。
「だって」
リフはふっと目を伏せた。サア、と雨音が屋根を滑った。
「ジェイミーは、僕の事止めてくれたでしょ」
「それは、お前がここに泊まるっていうから」
リフは微笑んだ。泣きそうにも見える笑顔で。
「優しい人だね、ジェイミーって」
「そ、そうか?」
「うん、とっても」
そんなに褒められても、出せるのはパンのミミくらいだ。褒め損だぞ、リフ。
「ありがとう……てくれて」
小さな呟きは、風に煽られた雨音に紛れてよく聞き取れなかった。
日中の晴れ間は一時的なものだったらしい。雨はいまだに振り続けている。しかも風が出てきた。そのせいか、アイはパトロールに出かけなかった。窓枠に跳び乗って外を見ている。
俺はリフと一緒に押入れの布団に包まっていた。俺は床で寝るつもりだったんだけど、リフがどうしても一緒に寝て欲しいとごねるので、根負けした。
「しょうもない甘えっ子だな」
苦笑すると、小猫はぺろりと舌を出して笑う。
「だって、こんなの久しぶりだもん。ダグラス先生も怖かったけれど、後任のレオン先生もなかなかの人で、絶対一人でしか寝かせてくれないの。アークもレオン先生の味方だし」
「へえ」
お坊ちゃんにも苦労はあるということか。ガキの頃くらい、好きにさせてやればいいのに。どのみち時が経てば一人立ちするんだし。
「誰かが隣に居るってだけで、安心するの」
俺の腕をきゅっと掴んで、リフが呟く。
「それは分かる気がする」
どんなに辛い夜でも、アイがそばに居るだけで眠れたように。
「やっぱりジェイミーは良い人だ」
リフは嬉しそうに言う。宝物を見つけた子どものように、その笑顔はどこか得意げだ。
「ジェイミーに会えて、僕、ほんとに良かった……」
風が窓を揺らした。ぽちゃん、と雨漏りの音が聞こえた。外を見飽きたのか、アイがやって来て俺達の足元で丸くなった。
やがて、静かな寝息が聞こえてきた。小猫は幸せそうな顔をして寝ている。
「……温かい」
ぽつり、と呟いた。隣に居る温もりがふわりと眠りに誘う。あふ、と欠伸をして俺は目を瞑った。
『僕、怖くなんかないよ』
『見るなって言っても見るから』
『大好きだよ』
その夜は、いつもの問いかけが聞こえることも無く、ぐっすりと眠れた。