あの日、小猫と出会ったから


 調達してきた夕食は、レシュノルティアの王子二人に大好評だった。大喜びしたシェリフは勿論、ナイジェルも時折笑みを見せながら念願の食事を楽しんでいた。
 俺はというと、ホットドックに恐々とかぶり付くアークさんに笑いを堪えるのが大変だったり、さり気なく飲み物を注いでくれるリサさんにどぎまぎしたりと忙しかった。一番可笑しかったのは、無表情のままポテトをくわえてもぐもぐしているイルジアさんだったけど。
 何だかだしているうちに暗くなり、俺は強制的に同じホテルに泊まらされた。まあ、一晩くらいは俺が居なくてもアイは大丈夫だろう。どちらにせよ、俺に選択権は無かったし。
 色々あって流石に疲れたんだろう。広いベッドにパタンと横になって幾らも経たないうちに、俺は夢の世界に落ちていた。

 誰かが頭を撫でてくれていた。偉いな、ジェイミー。そう言って褒めてくれた。
 嬉しかった。でもちょっと照れくさくて、一瞬目を逸らして俯いた。
 次の瞬間――
『悪く思うなよ』
 物凄い力で掴まれた首。大きな手で塞がれた悲鳴。気味の悪い、血走った目が囁く。
『母さん達に会いたいだろう?』
 恐怖で体が動かない。吊り上げられて息が出来ない。思考にノイズが走る。
 苦しい。助けて。誰か、誰か、
「誰か……!」
 目を覚ました。隣にアイが居ない。ここは家じゃない。恐怖が這い上がってくる。ここは一体、どこだ。
 震える体を宥めて周りを見回す。高い天井。暖かい色で広い部屋を照らす常夜灯。そうだ、ここはシェリフ達が泊まっているホテルだ。養護院じゃない。
「夢、か」
 分かった途端、息苦しさから解放された。全速力で走っていた心臓がゆっくりペースを落としていく。背中に嫌な汗をかいていた。
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