あの日、小猫と出会ったから
「お忍び、お忍び」
大層ご機嫌なシェリフを間に挟み、ネクタイ外した俺とアークさんは公園へ向かった。
『外に出掛けるなら、念の為イルジアかアークを同伴させる。どちらにするかはお前が決めて良い』
昨日、ナイジェルにそう言われていた。どっちも嫌だから、エディスさんかカルミアさんにして欲しいと頼んでみたのだが、あっさり却下された。
『僕は構わないが、アークに恨まれるぞ。あいつ、シェリフ付きとしての責任感半端無い上に、プライド高いから』
だったら最初から王太子命令でアークさんにしてくれよ、と思ったのはここだけの話。
そんな訳で、外に行きたいと所望なさったシェリフ殿下の我が儘に付き合って、アークさんに同伴をお願いした。仕方ありませんね、と言いつつシェリフに頼られた事が嬉しかったようで安心した。
海側は天気が悪く風が強いそうだが、内陸部のスキラは良い天気だ。穏やかな風が少し冷んやりしてきたのは、秋が深いからだろう。
「楽しいね、お忍び」
「そうやって口にしてる時点でお忍びじゃないだろ」
騎士殿が意味ありげに咳払いしたけど、気にしない。王太子の許可もらってるから、怖くな……くもなかった。腰に剣があれば、喉元に突きつけられてそうなおっかない眼をしている。なるべくこの人の目は見ないでおこう、と心に決めた。
昨日も寄った噴水のある公園で遊んだ。アスレチックを全制覇し、シェリフは得意そうな表情で俺に笑いかける。小猫は特にジャングルジムが気に入ったらしく、登っては降り、降りては登りを繰り返していた。
俺達が遊んでいる間、アークさんは近くのベンチで休んでいた。という名目で、俺を見張っていた。どうやらシェリフ殿下誘拐疑惑は、完全には晴れていないらしい。一応、さり気なさを装ってか、新聞を読んでるフリをしている。しかし、広げた新聞の上からギラギラ光っている目は、怖い上に余計怪しかった。
「昼食、買ってきますね」
昼時、シェリフをアークさんに預けて、俺は屋台村に向かった。あれこれ詮索されないために、端の方にある、いつもは行かない屋台で買い物を済ませた。
テイクアウトのパスタ屋台。定番ミートソースとクリームソース、珍しい所でチリソースの三つをチョイス。勝手なイメージからアークさんには紅茶、シェリフにはサイダーを買った。自分は公園の水道で飲む事にする。節約、節約。
「美味しいね、ジェイミー」
口の周りをトマト色に染めて王子が笑う。こうして見ると、王族も普通の人だ。まあ、シェリフはちょっと特殊なのかもしれないが。