あの日、小猫と出会ったから
「大丈夫だ」
小さな肩を抱き、俺は前にも言った確信を繰り返した。
「お前は出来損ないなんかじゃない。お前の両親や兄貴は、お前の事大事に思ってる。本音を言った位で、お前を嫌いになったりしない」
肩が震え、小猫は小さく嗚咽した。
「絶対に大丈夫だ。だから、勇気出して向き合え」
シェリフは顔を上げた。大粒の雨が頰から零れ落ちる。俺は亜麻色の髪をぽふっと撫でて微笑んだ。
「な?」
不意に表情が歪んだと思うと、シェリフは俺に抱きついてきた。右手で小猫を受け止め、左手でペンキの剥げかけた鉄の枠を掴んで体勢を保つ。落ちたら一大事だ。国の火種になっちまうかもしれない。
「……お願い、ジェイミー」
涙声で、でも昨日より落ち着いた声で、シェリフは言った。
「もう一回、言って」
心を込めて、もう一度囁く。
「俺も、お前の家族も、お前の事が大好きだよ」
ぎゅっと俺にしがみつき、シェリフは泣いた。小猫が落ち着くまで、俺は黙って頭を撫でていた。
どうか、笑っていて欲しい。こんな俺を――化け物と忌まれるオッドアイの奴を、友達だと言ってくれたお前には。
ひとしきり泣いた後、シェリフは真っ赤な目で俺に笑いかけた。
「ありがとう。ジェイミーは、僕の初めての友達だよ」
俺も笑って返す。
「王子様の友達になれたなんて、光栄だな」
こちらを見ているアークさんが手を上げた。帰る時間だ、との合図だ。
「行くか、シェリフ」
「うん」
心なしか明るくなった小猫の瞳に、澄んだ青空が映っていた。
友達だよ。ジェイミーは、僕の。
その一言は、未だぐらついていた俺に、決意を固める勇気をくれた。
帰り道、アークさんにお願いして俺の家に寄ってもらった。もう一泊していって、というシェリフ殿下の我儘に応えるためだ。アイを連れて行けるのなら、という条件を出したのは、当分面倒を見てやれないアイをシェリフに託す為だった。
『勇気出して向き合え』
本当にそうしなきゃいけないのは、俺自身だった。ずっと逃げて来た本当の自分と、俺は向き合わなきゃいけない。
『このままでいいのか?』
答えは既に出ていた。俺が逃げていただけで。臆病だっただけで。
『ジェイミーは、僕の友達!』
小猫の友達だと、胸を張って言えるようになりたい。そのために、俺は変わらなきゃいけない。いや、変わりたい。
顔を上げて、空を見上げる。手を伸ばせば届きそうな雲。
自首して、今までの罪を清算しよう。そして、やり直そう。もう、本当の自分から逃げたりせずに。
小さな肩を抱き、俺は前にも言った確信を繰り返した。
「お前は出来損ないなんかじゃない。お前の両親や兄貴は、お前の事大事に思ってる。本音を言った位で、お前を嫌いになったりしない」
肩が震え、小猫は小さく嗚咽した。
「絶対に大丈夫だ。だから、勇気出して向き合え」
シェリフは顔を上げた。大粒の雨が頰から零れ落ちる。俺は亜麻色の髪をぽふっと撫でて微笑んだ。
「な?」
不意に表情が歪んだと思うと、シェリフは俺に抱きついてきた。右手で小猫を受け止め、左手でペンキの剥げかけた鉄の枠を掴んで体勢を保つ。落ちたら一大事だ。国の火種になっちまうかもしれない。
「……お願い、ジェイミー」
涙声で、でも昨日より落ち着いた声で、シェリフは言った。
「もう一回、言って」
心を込めて、もう一度囁く。
「俺も、お前の家族も、お前の事が大好きだよ」
ぎゅっと俺にしがみつき、シェリフは泣いた。小猫が落ち着くまで、俺は黙って頭を撫でていた。
どうか、笑っていて欲しい。こんな俺を――化け物と忌まれるオッドアイの奴を、友達だと言ってくれたお前には。
ひとしきり泣いた後、シェリフは真っ赤な目で俺に笑いかけた。
「ありがとう。ジェイミーは、僕の初めての友達だよ」
俺も笑って返す。
「王子様の友達になれたなんて、光栄だな」
こちらを見ているアークさんが手を上げた。帰る時間だ、との合図だ。
「行くか、シェリフ」
「うん」
心なしか明るくなった小猫の瞳に、澄んだ青空が映っていた。
友達だよ。ジェイミーは、僕の。
その一言は、未だぐらついていた俺に、決意を固める勇気をくれた。
帰り道、アークさんにお願いして俺の家に寄ってもらった。もう一泊していって、というシェリフ殿下の我儘に応えるためだ。アイを連れて行けるのなら、という条件を出したのは、当分面倒を見てやれないアイをシェリフに託す為だった。
『勇気出して向き合え』
本当にそうしなきゃいけないのは、俺自身だった。ずっと逃げて来た本当の自分と、俺は向き合わなきゃいけない。
『このままでいいのか?』
答えは既に出ていた。俺が逃げていただけで。臆病だっただけで。
『ジェイミーは、僕の友達!』
小猫の友達だと、胸を張って言えるようになりたい。そのために、俺は変わらなきゃいけない。いや、変わりたい。
顔を上げて、空を見上げる。手を伸ばせば届きそうな雲。
自首して、今までの罪を清算しよう。そして、やり直そう。もう、本当の自分から逃げたりせずに。