あの日、小猫と出会ったから
「例の事件のせいだろう。昏睡状態にまでなったんだ、無理も無い。事実を知った心的ショックも大きかったようだし」
「え……?」
 昏睡状態? 心的ショック? それって一体いつの話だ。
 俺が経験した事故と言えば、オッドアイになった原因の怪我くらいだ。でも、たかが目を怪我したくらいで昏睡状態になるわけが無い。他の誰かと間違えてるんじゃないか、と思いつつ尋ねてみた。
「あの、それって目を怪我した時の事ですか」
 刑事さんは怪訝そうな顔をして俺を見る。
「目を怪我? そんな可愛いものじゃなかったぞ、あの事故は。偶然、私がアルタロゼア勤務だった時に捜査に関わったから知っているんだが……覚えていないのか?」
「覚えてない……って、何の事ですか」
「あの時、君に面会に来た君の母方の親族が、事故に見せかけて君を三階の窓から突き落としたんだ。目的はこれ」
 刑事さんは親指と人差し指で円を作って見せた。金だ。背筋がぞくりとした。
「数週間、意識が戻らなかった。何度か見舞いに行ったが、よく助かったと思う」
「意識が、数週間……?」
 なんだ、それは。全然覚えていない。目の色が変わったのは事故のせいと聞いていたけど、てっきり何処かに目をぶつけたんだろうくらいに思っていた。養護院の職員もそう言っていたし。
「両親の昔話をしていたら、突然君が親の後を追うと言って飛び降りた、止めようとしたが間に合わなかったと奴は言った。すぐに嘘だと分かったがね。奴は、君のお母さんが僅かながら君に残した貯蓄を狙っていた」
「母が、俺に……?」
 確かに、六つか七つ位の時遠戚が会いに来た。それはぼんやりと覚えている。知らない人だったから、初めは警戒していた。瞳以外は母さん似だなって言われた。菓子か何かを貰った気がする。一人で頑張ってて偉いなって、頭を撫でてくれた。褒められてちょっと嬉しかった――
 そこまで思い出して、俺はようやく気が付いた。ホテルで見たあの夢は、もしかして。
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