あの日、小猫と出会ったから
「目が覚めた後、君は事実を聞かされた。ただでも不安定だった上にかなりのショックだったんだろう。しばらくは錯乱状態が続き、退院して落ち着いた頃には、それ以前の二年間の記憶が抜け落ちたように無かったと……」
多分、俺は相当間抜けな顔をして聞いていたんだろう。刑事さんは言葉を止め、深く溜息をついた。
「その様子じゃ、本当に覚えていなかったんだな。まあ、覚えていたくもないよな……」
確かに覚えていなかった。話を聞いた今でも、何となく現実味を感じない。
ただ、刑事さんの話が事実である事には間違い無いのだろう。色んな事の辻褄が合う。歳がうろ覚えだったのも、オッドアイになってみんなに避けられた事も、ホテルでの妙な既視感も、怖い夢も――全ては金目当てで俺を殺そうとした奴のせいだった。つまりあれは夢では無く、失くした記憶を偶然再生していただけだったのだ。
「じゃあ、もしかして俺の両親が死んだ事故も金目当ての?」
「いや、あの事故に事件性は無かった。純然たる事故だった。ただ、君を親族ではなく養護院へ預けて欲しいと御両親が最期に言い残したのは、君を守るためだったんだろう。元々、君の親族は金銭問題でトラブルが多く、二人とも苦労したらしいからね」
そうだったのか。てっきり、養護院に入れられたのは、親族がいないか疎遠だったからだろうと思っていた。オッドアイになってからは、どうして親族に預けてくれなかったんだろうと嘆いた事もある。
だけど。
「……俺、本当に大事にされてたんですね。両親に」
「そうだな」
最期まで俺の事を考え、案じてくれた二人の気持ちを思うと、後悔の念で一杯になった。
父さん、母さん、ごめん。掏摸になったりして、ごめん。人の道に外れた生き方をしてしまって、ごめん。
ふと、目の前にティッシュが差し出された。優しい刑事さんの目がこちらを見ていた。
「今のうちに泣いとけ。収監されたら泣く暇もないぞ」
そう言われて、自分が泣いている事に気が付いた。これは後悔の涙か、それとも。
刑事さんは机に肘を付いて少し身を乗り出し、俺に尋ねた。
多分、俺は相当間抜けな顔をして聞いていたんだろう。刑事さんは言葉を止め、深く溜息をついた。
「その様子じゃ、本当に覚えていなかったんだな。まあ、覚えていたくもないよな……」
確かに覚えていなかった。話を聞いた今でも、何となく現実味を感じない。
ただ、刑事さんの話が事実である事には間違い無いのだろう。色んな事の辻褄が合う。歳がうろ覚えだったのも、オッドアイになってみんなに避けられた事も、ホテルでの妙な既視感も、怖い夢も――全ては金目当てで俺を殺そうとした奴のせいだった。つまりあれは夢では無く、失くした記憶を偶然再生していただけだったのだ。
「じゃあ、もしかして俺の両親が死んだ事故も金目当ての?」
「いや、あの事故に事件性は無かった。純然たる事故だった。ただ、君を親族ではなく養護院へ預けて欲しいと御両親が最期に言い残したのは、君を守るためだったんだろう。元々、君の親族は金銭問題でトラブルが多く、二人とも苦労したらしいからね」
そうだったのか。てっきり、養護院に入れられたのは、親族がいないか疎遠だったからだろうと思っていた。オッドアイになってからは、どうして親族に預けてくれなかったんだろうと嘆いた事もある。
だけど。
「……俺、本当に大事にされてたんですね。両親に」
「そうだな」
最期まで俺の事を考え、案じてくれた二人の気持ちを思うと、後悔の念で一杯になった。
父さん、母さん、ごめん。掏摸になったりして、ごめん。人の道に外れた生き方をしてしまって、ごめん。
ふと、目の前にティッシュが差し出された。優しい刑事さんの目がこちらを見ていた。
「今のうちに泣いとけ。収監されたら泣く暇もないぞ」
そう言われて、自分が泣いている事に気が付いた。これは後悔の涙か、それとも。
刑事さんは机に肘を付いて少し身を乗り出し、俺に尋ねた。