お嬢様と羊
そう言われ、晋輔はもう一度陽葵に殴りかかった。
「じゃあ、お言葉に甘えて!」
パシッ━━!!
ゴッ━━!!!!
「うがぁーー!!」
陽葵は殴りかかってきた晋輔の拳を振り払い、晋輔の腹を膝で蹴った。

「陽…葵?」
一弥が、いや…そこにいた全員が驚愕した。

「ほらね!!
男性に勝てるとは思ってないけど、少し位なら戦えるのよ!私」
ニコッと頬んで、一弥に言った陽葵だった。

「さっきはすんませんでした!
陽葵様」
「別に、もういいわよ!謝らなくて。
それに、様付けはしなくていいわよ!晋輔」
腰を90度折って謝る晋輔に、陽葵は微笑んで言った。
「じゃあ…俺も陽葵呼びで……」

「はぁぁ?」
陽葵と一弥がハモる。

「あ…すんません!調子にのりました!」
「それにしても、陽葵スゲーな!
晋輔も、結構強い方なんだよ!」
一弥が頭を撫でながら、言った。

「自分のことは自分で守らないとね!」
「でも……」
「ん?」
「できる限り、俺に守らせてね!」
「そうね、羊だもんね(笑)!」
「だから!あーもういいや!羊でも何でも!」

「でもよ、なんで執事なんだ?」
一弥の親友で右腕・空牙が言った。
「陽葵の親父が執事としてじゃねぇと会わせないっつうから」
陽葵の隣に座っていた一弥が、煙草を取り出して咥え火をつけようとする。

「……秀人?」
「え?陽葵?」
「あ…ごめん。
何もないわ……いるわけないよね……?」
陽葵は頭をフルフルと振って俯き、自分のスカートを握りしめた。
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