お嬢様と羊
「は?あの……」
「何?嫌なの?」
「いえ…」
「あ、そうか!なりたくてなったんじゃないのか!
じゃあ、嫌よね?
悪かったわ、もういいわよ!下がって!」
そう言って陽葵は、荷造りを再開した。

「陽葵様」
「何?」
「陽葵様がいいと仰るなら、お世話をさせていただきます。正直、クビになってもすぐに働き口ないので………それに好………」
「え?」
「いえ…何も…」
「そう?じゃあ、よろしく!一弥」
「よろしくお願いします」
「ねぇ…だったら、荷造り手伝ってよ!」
「畏まりました」
一緒に荷造りをする、二人。

「一弥って、元々何してた人?」
「え?」
「どっかで会ったことある気がするのよね?
しかも私にあんな口答えできるってことは、何かあると思うの。みんな、パパのこと怖がって私に何も言わないから……
別に言いつけたりしないのにね…」
「あ、それは……
陽葵様?」
少し悲しそうな陽葵。

一弥は思う。
もしかして、わざとにあんな言い方をした?
ほんとは繊細な人なのかも……と。

「僕には、何でも仰って構いませんよ。
僕も言い返しますので(笑)」
「フフ…へぇー、よく見るといい男ね…素敵……」
「……////」
一弥の顔を覗き込む、陽葵。
陽葵は内面はともかく、容姿が美しい。
思わず、顔を赤くする。

「どうしたの?気分悪いの?」
「あ、いえ!大丈夫です」
「そ?」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
マンションに移動する二人。
だいたいの荷物は他の使用人がおこない、もう生活できる状態だ。

「もう一つの部屋使っていいわよ!」
「いえ…別の部屋を借りますので……」
「は?面倒じゃん!一緒に住めばいいでしょ?
てか、私…一弥に嫌われてるの?」
「いえ…」

「私は好きよ、一弥のこと」
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