お嬢様と羊
「一弥?」
「陽葵と約束したんで!
俺が死ぬ時は、陽葵も一緒に連れて逝くって!」

「………」
「羊!!もう、いい!その話は!
佳輝も光希も、やめて!!」
「あ、ごめん…陽葵」
「わりぃ…」
「ごめんね、陽葵。私もつい…」
陽葵の言葉に、一弥達が止まる。

「喉乾いた!
陸朗、なんかちょうだい!」
ソファに座り、足を組んでいた陽葵。
静まり返るバー内に陽葵の声が響く。

「ん。何がいい?」
「紅茶」
「ん」
「陽葵に俺が持っていきます」
カウンターにいる陸朗の所へ向かい、一弥が言った。
「ん。頼む。
…………あ!今思い出した!」
「は?」
「お前、イカロスの総長だ!」
「元・ですけど…」
紅茶を受け取りながら、一弥が言った。

「へぇー」
マジマジと見る、陸朗。
「あの…キモいよ、アンタ」
「フッ…!悪いな!
てことは、強いっつことだよな!」
「はい?
━━━━━━━━!!!!」
陸朗がすかさずナイフを一弥に向けた。
それを紙一重で避け…………
「うっ……!!
…………ってぇーー!」
「なんすか!?急に!!」
陸朗の手を掴み、握りつぶしたのだ。

「ちょっ…冗談だよ!離せ!」
「冗談でナイフを向けないでください!!」
「痛かったぁ…
いいじゃん!ちょっと手合わせしたいなって思ったんだよ!?」
掴んだ手を離しながら言う一弥と、その手をさする陸朗。
「てか、スゲーな!お前…」
佳輝が感心しながら、一弥に近づいた。

「別に!とにかく!今後、冗談でもやめてください。
あまり陽葵の前で、喧嘩はしたくありません」
「そうだな」
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