お嬢様と羊
「あぁ、そうだよ。
星野は“執事”になれても“一人の男”にはなれない。
あくまでも“使用人”だ。
陽葵と対等ではいられない。
お前は“喜多川 陽葵”だ。
立場を弁えろ!!」

基本的に陽葵には優しい大志。
でも今回はより厳しい視線で、陽葵を見据え言った。

「旦那様。
九重様がいらっしゃいました」
「通せ」

大志の一声に、九重が入ってくる。
「失礼します。お義父様、陽葵さん」
「九重くん、座って」
「はい、失礼いたします」
陽葵の横に少し間を開けて座る九重。

「悪かったな。娘がワガママでなかなか会わせられなくて……」
「いえ。こうして会えるだけで僕は幸せです」
「本当にいい青年だな。
な?陽葵もそう思うだろ?」
「………」
「陽葵さん?」
九重が陽葵の顔を覗き込む。

「九重さんは、私のどこがいいんですか?」
「え?」
「答えてくださる?」
「うーん。そうですね。
おしとやかな雰囲気と、可愛らしい笑顔。
後は……………」
「フッ…!!!」
「プッ…!!!」
陽葵と一弥が吹き出した。

「え?」
「一弥、おしとやかだって!」
「フフ…騙されてるな(笑)!」
「九重~!」
「は?」
突然陽葵が九重に呼び捨てで、しかも口調を変え話しかける。

「私はね、お前が思ってるような女じゃねぇんだよ!?」
「あぁ、そうだな!
猫かぶり姫だもんな!陽葵は」

これには、大志も驚愕する。
「パパ、言ってなかったの?私がこうだって!」
「陽葵」
「あ?なんだよ!?
パパがそんな風に、私から一弥を離そうとするなら私はもう……お嬢様をやめる!」

「陽葵、いいのか?
俺にそんなこと言って……!!!」
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