お嬢様と羊
「これ、不味い!
作り直して!!」
陽葵は完全に心を閉ざし、荒れていた。

「はい!申し訳ありません!奥様」
使用人はかなり手を焼き、何人の人間が辞めていったかわからない位だ。

「陽葵、もう少し優しくしてあげて?」
「は?
私に指図しないで!
一弥を連れてきて!
一発殴らないと気が済まない!!
嘘つき羊!!」
「だからね、星野くんには使用人としてならって声をかけてるんだよ?
でも、彼が受け入れないんだ」
「どうして?」
「陽葵を拐うからだって!」

「は?」

「会ったら、きっと無理やり拐うからって言ってたよ」
「拐ってよ……」
「無理でしょ?」
「あーもー、うるさい!!
寝る!!」
乱暴にドアを開け、寝室に向かった陽葵だった。


ベットに寝転び、天井を見つめる陽葵。
「会いたい…
会いたいよぉ、一弥……
助けてよ…一弥」

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その日の午後陽葵は、秀人の墓の前にいた。
「秀人、私を…秀人のとこに連れてって」
地べたにぺたんと座り込み、秀人の名前をなぞる。

「あの時、どうして…私を一緒に連れていってくれなかったの?
そうすれば、一弥に逢わずに済んだのに……!
こんな……心臓を抉られるような思いをしなくて済んだのに…………」
陽葵の目から涙が溢れ、止まらない。

「どうして…
一弥は、
会いに来てくれないの?」
陽葵の苦しい思いが、墓場の中に消えていく。

「…………一弥、一弥、一弥、一弥、もう…ワガママ言わないから、会いに来てよ!」




「………陽葵」
陽葵が声をする方を向くと、花束を持った一弥がいた。
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