この夜、返品可能です。






時々ある、宵くんがわざわざキスするのに許可を求めて来る瞬間。



わたしがいつもご丁寧に直接「えちしよ!?」て誘って迫るのに対して、宵くんは何も言わずに触れてくることが多いから、こうやって口で言われると、いつもちょっとびっくりしちゃうのだ。



只今、宵くんの部屋。

宵くんの匂いに包まれているので実質天国と同義(by 有川仁乃辞典)。



「なるほど、キッスですね」

「キッスて言うのやめん?」

「本日はどんなコースをご所望で?」

「如何わしいマッサージ店みたいだなおまえ」

「ちなみにお値段、何度やっても無料!おめでとうございますラッキーボーイ!」

「アハハ、いえーい」




いやいや宵くん、いえーいが棒読みなんよ。と心の中で返思いながら、「イエーイ!」と宵くんの3倍くらいのテンションで返す​──と。


「仁乃」


優しく名前を呼んだ後、わたしを黙らせるようにちゅ、と唇が触れた。


1回目。

もちろんお値段、無料である。



< 178 / 181 >

この作品をシェア

pagetop