導かれて、放れられない
「派手にやったなぁ」

桔梗は圧倒されていた。
聖二郎が共に連れてきた組員達。
みんな恐ろしい雰囲気を纏い、十数人…いや、数十人聖二郎の後ろにひかえていた。

しかもその組員達全員、天聖に挨拶をする。
「「若、お疲れ様ですっ!!」」

桔梗は今初めて、天聖が最大勢力を誇る虎尾組の若頭だと認識したような気がした。

「桔梗」
「え?」
「あとは、親父に任せて帰ろ?」
「え?でも…」
「大丈夫。友達には断りいれたから。
早く帰って俺の嫉妬心、癒して?」
「はい…」
「え━━━?桔梗…!?」
桔梗はその場で、腰が抜けへたりこんだのだ。

「天聖さん」
「ん?大丈夫?おいで、抱っこするから!」
「私も」
「うん」
「嫉妬まみれです」
「え?」
「醜い感情に包まれてます」
「うん」
「ほんと…絞め殺しちゃいたいですね」
「そうだね」
「でも、できない……」
「うん」
「だから…」
「うん」
「癒してください」
「うん、もちろん…!
帰ろ?いっぱい、癒してあげるよ?」

桔梗は涙が溢れて、止まらなかった。
それを天聖が、手で拭う。
そのまま抱き上げられ、店を出たのだった。

車内で並んで座っている、二人。
桔梗は天聖の腕にしがみついていた。
「フフ…可愛い~桔梗。
それに嬉しい。甘えてくれるなんて……」
「こうされるの好きですか?」
「うん!もっとして?」
「………」
桔梗は無言で、腕から離れた。

「桔梗?もっと甘えてよ?」
「輝美さんにされた時も、嬉しかったですか?」
「は?」
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