導かれて、放れられない
「天聖さん」
「ん」
「天聖さんも、私に逢ったことがある記憶あるんですか?」
「うん、昔はずっと一緒にいたのに、引き裂かれてずっと桔梗のこと探してた感じがする」
「私もです!
なんだか、凄く切なくて、愛しくて、苦しい」
「うん。
…………ねぇ、もう二度と放れたくないんだけど?」
「天聖さん?」

「俺はね、もう二度と桔梗と放れたくない。
だから、可能なら今すぐにここに越してきてほしい。
桔梗がいるところに帰りたい。
ずっと一緒にいたい。
好きなんだ。桔梗が。どうしようもなく……」
桔梗は手を握られていない方の手で、天聖の頬に触れた。

「私はどんな覚悟をすればいいですか?」
「え?桔梗…?」
「どんな覚悟をすれば、私は天聖さんの恋人になれますか?
正直、天聖さんのいる世界がどんな所かわかりません。ただ、恐ろしいとしか……
だから、私がすべき覚悟を教えてください。
…………私も……
私も、天聖さんがどうしようもなく好きです。
今日も正直怖くて躊躇したけど、それよりも凄く会いたくて連絡しました」
頬に触れたまま、ジッと天聖を見つめ言った桔梗。

「フッ…そんなの簡単だよ」
天聖はフワッと微笑んで、言った。

「そんなの……俺に愛される覚悟だけで十分だよ」
「え?」
「確かに、桔梗が想像しているよりも怖い世界だと思う。普通より俺達は“死”が近くにあるから。
でも、大丈夫。俺が桔梗を守ってみせる。
桔梗はただ、俺に愛されて傍にいてくれたらいい……」
そう言った天聖。
頬に触れていた桔梗の手に、キスをした。
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