とろけるような、キスをして。



 驚きの余り、玉ねぎをポロッと落としそうになって慌てて抑える。



「……え?」



 聞き間違いかと思って聞き返すと、先生はもう一度



『俺ん家、一部屋空いてるから泊まっていいよ。もちろん金いらないし。それなら何も気にしないで土日もいれるでしょ』



と爆弾発言をする。


 もう、カレールーの在処など考えている場合じゃない。



「先生、自分が何言ってるかわかってる?」



 意味も無くカートごとスーパーの端に寄り、小声で聞く。



『もちろんわかってるよ。安心して。鍵付きの部屋だし、同意無く手出したりしないから』



 ……それはつまり、同意があれば手を出すということでしょうか。


……まぁ、先生に限ってそんな間違いを犯すとも思えないけど。



『どう?』


「いや、どうって言われても……」



 普通、ダメでしょ。


いくら卒業していてもう直接的に教師と生徒ではないとは言え、……ダメでしょう。ほら、倫理的にというか……道徳的にというか……あれだよ、あれ。


 一ミリも考えていなかった案に、私の方が動揺した。もはや頭の中は軽くパニックだ。


 電話をしながら頭を抱えている私を、通り過ぎる人が皆不思議そうに見つめてくる。


それに恥ずかしさを感じている余裕も無い。


< 53 / 196 >

この作品をシェア

pagetop