茨ちゃんは勘違い
事の発端は、プールで放った木更津の一言であった。

「責任を取らせてくれ。今度の日曜デートをしよう!」

全くもって意味不明な発言である。

相手をもう少し選んでデートに誘うべきだし、何故に責任を取る方法がデートなのか。

さらに試験直前のデート、つまり明日という日を指定したのも、自分は勉強しなくても点数が取れるという自信の表れからきているのか知らないが、もう少し考えて物を言うべきだったのではないか。

勢いで言ったにしても、巻き込まれた人間は迷惑だ───百合絵は氷が溶け薄まったアイスコーヒーをストローで啜りながら、溜め息を吐いた。

「ね!百合ちゃん!これ飲んだら、もう少し付き合ってね♪」

茨がニコニコと呼び掛けるが、それには応えず、おもむろに窓の外を眺めた。

日曜前日だからか、街はいつもより人集りで賑わっている。

中には数組のカップルも居て、寄り添い、くっつき、決して離れず、ベタベタベタベタしていて、百合絵の苛々を増幅した。

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