茨ちゃんは勘違い
「...洋服選びとデートプランの事で頭がいっぱいで、テスト勉強なんて全くやってないんだって」
「あー...あはははー...」
「なになに?茨のように可愛くなるにはどうしたらいいかって噂?参っちゃうな〜♡」

百合絵が桜の耳元でボソリと呟くと、桜は笑顔になり切れてない笑顔を浮かべ、それを見た茨が素晴らしいポジティブ思考で解釈した。

「英語以外は40以上取れた?なら何とかなるんじゃない?」

百合絵はゲンナリした表情をすると、面倒臭そうに茨に訊いた。

「ん〜多分、美少女補正で取れているとは思うのだけれど、英語は日本国外の言語じゃない?あちしが国際A級美少女ライセンスを顔パスで取れる大和撫子だという事は周知の事実だとは思うんだけれど、何分茨ってば箱入り娘だから〜?ね〜?」

同意を求められても困るのだが、長々と自分を持ち上げる努力を怠らない茨に、二人は感動すら覚えた。

百合絵は深く溜め息を吐き、茨の方を向いて、

「うん、じゃあ諦める?」
「ちょっとちょっと〜親友なんだから冷たくしないでよ〜夏も間近なのに茨凍えちゃうよ〜」

満面の笑顔で言うと、茨は然程慌てる事なく百合絵に再度助けを求めた。

とっとと諦めてくれれば楽なのに...と、百合絵は心の中で呟くと、もう一度溜め息を吐き、重い腰を上げた。

「はいはい、友達だものね。出題範囲のどこが分からないの?」
「ん〜っとね、全部♡」

百合絵が言った「友達」という言葉に、桜は「やっぱり」と言いながらクスリと笑い、その場を去ろうとする二人の後を追った。

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