茨ちゃんは勘違い
入学式に出会った
「A…A…BB…A…B…A…B…C+…C…B'………」

…。

「B…A…B…B…C…A…C…C…おぉっ!AA+!!………D'………E………」

………。

「…ふ~む…さすが桐海暁学園…偏差値だけでなく、男子のレベルも高いわねぇ…」
「………あの~~~さ…」

まだ、入学式は始まっていない。

ただ、黒酉の驚異に晒された一年B組の生徒諸君は、どのクラスよりも早く体育館で整列しているだけだ。

百合絵も、その中の一人であったが、それまで大人しかった背の順でも一つ後ろの茨が、後から来た他の教室の生徒が来るにつれ、訳の分からないアルファベットをブツブツ独唱しているのが、気になると同時にムカついていた。

そんな訳で、意を決して茨に訊ねてみたところであった。

「ん?何かしらん?ユリユリ?」

渾名っぽく、二回続けて言わないで欲しい…仲の良い友達みたいに見られるではないか、と百合絵は心底嫌気が差したが、それは敢えてのスルーで改めて訊いた。

「えぇと…さっきから、何で規則性の無いABCを言ってるのかなって…」
「ああ!これね!」

茨はさも当然のように、ちょこっと人差し指を上に向けて百合絵に言い放った。
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