茨ちゃんは勘違い
歩いていける距離にある桐海暁学園は、元通っていた榊原中学のすぐ傍にある。

途中までの通学路は同じで、Y字に別れた道路に差し掛かるのだが、そこを向かって左が榊原。

右が桐海暁となっている。

入学式に向かった時は、危うくいつもの感覚で左に曲がりそうになった百合絵だが、今日は意識して右へと進む。

その途中、何人か後輩らしき榊原の制服を着た生徒を見たが、さして感慨深いものでも無い。

中学の思い出は、殆んど茨に潰されたようなものだったからだ。

(くくくく…思い出すだけで腹が立つ…)

回想最中に目から蒼白い光線を放ちそうな勢いの百合絵だったが、通りすがりのお爺さんがあまりの迫力に腰を抜かしタクシーに轢かれそうになったのを見て、慌てて平静を装った。

思い出し怒りも楽じゃない。

独りの時にやる事にしよう。

百合絵は自分の中で固い決意を結ぶと、己の昂りを抑えきれぬ軍人のようにズンズンと力強く歩み進んだ。

若干ガニ股歩きだし、へたれている爺さんに手を差し伸べもしないのはどうかと思うが。
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