茨ちゃんは勘違い
つい数秒前まで静寂を守っていたB組も、突然の雄叫びにビクリと身を震わせ、奇声を上げた張本人を思わず見張った。

百合絵はゼーハーと大きく呼吸を乱し、見事に驚かした桜の方をキッと睨む。

「ちょっ…アンタ何してくれん…」
「ゆ、百合絵ちゃん…?」

のよ、まで言い終わらない内に状況に気付く。

非常に不味い。

自分は清純派で大人しい美少女で通っているのだ。

入学して二日目で"地"がバレてしまうのは、非常によくない傾向だ。

「お、オホホホ……ごめーんあそあせっ」

百合絵は慌てて取り繕うと、静かに席に座った。

周りの生徒達の視線が、微妙に痛い。

恥ずかしさで顔からユリエビームという名の熱光線が出てしまいそうだが、こうして大人しくしている限り興味を無くしてくれるだろう。

百合絵が小さく纏まって机に向かっていると、後ろから再び、今度は耳打ちするように桜が呼び掛けてくる。

「…ごめーん…そんなにビックリすると思わなかったから…」
「い、いいよ。気にしないで。あははははは…」

この女も、いつか絞め落としてやろうかしら?

等と、恐ろしい考えが百合絵の脳裏を過る。

お願いだから、茨と一般人の区別ぐらいつけて欲しいものだ。

枷の外れた暴君は始末が悪い。
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