茨ちゃんは勘違い
「大丈夫?二人とも?風邪ひかない?」

と、二人を気遣うのは桜。

彼女もまた、水着姿なのだが、キャップにゴーグルをしていて完全に『選手』と化している。

色気は無いが、スポーティーで健康、何より桜は文科系という感じだったので、このギャップは返って点数が高めかもしれない。

「…桜ちゃん…人の心配してくれるのは有難いけどさ…何でそんな平気そうにスイスイ泳げるの?寒くないの?さっき水温見たら、10℃下回ってたよ…?」

歯をガチガチいわせながら、百合絵が恨めしそうに言う。

茨は既に鼻水が大量に出て、口元を塞いでいる上、クシャミの連発で喋るどころでは無い。

「ん~…私、泳ぐの大好きだから♪」

と、親指をグッと立てて嬉しそうに桜が言う。

さいですか…と、凄まじく声のトーンを落として呟く百合絵は、それ以上追及しなかった。

彼女達三人は、桐海暁学園水泳部に入部して早一月が経とうとしていた。
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