茨ちゃんは勘違い





ばっしゃーん!!





「「城山さん!?」」
「茨ちゃん!」

三人が声を上げ、慌ててプールの中を覗く。

凄まじい勢いで落ちた為、水飛沫が彼女達に降りかかるが、構わず茨の名を叫んだ。

今起きている事態は笑い事では済まされない。

何故なら茨はカナヅチであり、加えて平衡感覚を失っているときている。

溺れ死ぬ──最悪のイメージが三人に過る。

桜は直ぐ様、プールに飛び込み、茨が落ちた辺りへと向かった。

遅れて、畑山も慌ててそれに続く。

百合絵は──無我夢中で飛び込もうとしたが、自分もカナヅチである事を思い出し、そこで踏みとどまった。

「茨ちゃん──!」

百合絵は、桜と畑山の二人が無事に救いだすようにと、この時ばかりは悪態も吐かずにただ祈った。
< 97 / 224 >

この作品をシェア

pagetop