茨ちゃんは勘違い
茨が必死にもがいている地点は、プールのほぼ中心。

畑山・桜の二人が向かおうにも、水着ではなく制服で泳いでいるので、水を吸った重みで中々前に進めない。

そもそも、あんなに暴れている茨を抱えながら戻ってくる事は可能なのだろうか?

水泳部二人とはいえ、一人はマネージャー、しかも女。

とても無事に済むとは思えない。

百合絵は不安が募るばかりであった。

そうこうしている間に、茨が体力を消耗し、ついには腕だけが水面上に出ている状態になった。

(茨ちゃん──!)

その時だった。

「はぁっ!!」
「城山さんっ!!」

威勢の良い掛け声と共に二つの影がプールの中に飛び込み、女子二人を差し置いて、あっという間に茨を助けた。

大分水を飲んだのか、有り得ないくらい茨の腹が膨れている。

「「城山さんっ!」」

「あの二人は…」

ハモった二つの声──それは安部と木更津のものであった。
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