今宵、ロマンチスト達ここに集いて




『どうして?だって未来に連れて行くことができるなら、過去に戻すことだって可能でしょ?彬くんだって、いつも必ず元の時代に戻って来てるじゃない』

『それはそうなんだけど……。俺もはじめて知ったんだけど、自分以外の人間を一緒に時間移動させるのは、相当大変なんだそうだ。実験で行ったときは、力を持ってる側にかなりの負担がかかって、命を左右することになってしまったらしい。それで、以降は禁止されることになったんだ。だから、この子を未来に連れて行く人も、大きな代償を払うことになってくる。命懸けと言っても言い過ぎじゃないらしい。そういう事情で、特別に許可がおりたのは、今の時代から俺達の息子を治療可能な未来へ連れて行くことだけ(・・・・・・・・・)なんだ。もちろん未来に連れて行ったあとは、治療も含めてすべての生活を、然るべき人物、もしくはきちんとした機関によって保証してくれるそうだ。それを俺達が目で見て確かめることは不可能だけど……。そこは、信じるしかない。でも俺個人の感想では、アヤセさんは、信頼の置ける人だと思う』


誰かの命を助けるために別の誰かが犠牲になるなんて、本当はあってはならないことなのだ。
だからもしすべてが事実ならば、彬くんがそう言いたくなるのも共感できる。
でも、そんな綺麗ごとで判断できるはずない。
だって彬くんの話に従うなら、わたし達は、この子と……もう二度と会えなくなってしまう。
そんなの……
でもだからといって、このままだと、この子は病気で……

万が一、もし、もしも実際にその病気が見つかって、治療法がないと告げられたなら、わたしは迷うことはないだろう。
この子が助かるなら、何だってする。
例え非現実的な手段だろうと、SFだろうとファンタジーだろうと、可能性があるならそれにかけたい。
それだけは、間違いなく言えるのだ。
………もし、それが、永遠の別れを招くことになったとしても。









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