今宵、ロマンチスト達ここに集いて
『……わかった』
そう呟いたわたしに、彬くんはハッと息を詰める気配がした。
『いいのか……?』
恐る恐るわたしの様子を窺う彬くん。
『それしかこの子を助ける方法がないのなら、仕方ないと思うから。むしろ、この子の命を救ってくれるアヤセさんに感謝したいくらい。……でも、今すぐには決断できない。せめて、現実にこの子の病気でも見つからない限りは、この子を手放すなんてできっこない』
これは、わたしの最大限の譲歩である。
彬くんの不思議な力については、わたしも身に覚えがあるので疑う余地はない。
けれど、直接会ったことも見たこともないアヤセという人物の言うことには、絶対の信頼は置けないのだ。
そこでわたしは、彬くん経由で、そのアヤセさんとやらにいくつかの質問をすることを思いついた。
つまりは、テストだ。
我が子の命を託す人物が、本当に正しいことを言ってるのか、その情報の精度を確かめるために。
『未来にならないと分かり得ないような何かを、いくつか教えておいてほしいの。占いとか予言みたいな感じで。それが当たっているのを見届けてから、この子を預けるか考えるわ』
『……わかった。千代が納得できるように、アヤセさんにちゃんと訊いておく。明日の夜も会う約束をしてるから、そのときにアヤセさんに直に会って回答を聞いたらいい。その方が千代も安心できるだろう?』
明日……
彬くんを介してしか存在を知り得なかったアヤセさんに、わたしも会うことになるなんて。
それも、急に、こんなかたちで。
狼狽えてしまう内心を、わたしは懸命に隠しながら、
『そうね、そうするわ』
子供のため、たったひとつの守りたいもののために、そう返事したのだった。