今宵、ロマンチスト達ここに集いて




『早速ですが、彬文さんよりご質問のあった、”近い未来に起こる出来事” についてお答えいたしますが、よろしいでしょうか?』

前触れもなく本題に入ろうとするアヤセさんは、表向きにそんな雰囲気はないものの、そこはかとない性急(・・)も感じられた。
当然、わたしの返事は決まっている。

『お願いいたします』


『わかりました。それでは、まず一つ目です。このあと、そうですね…おおよそ一時間後でしょうか、廊下で小さな女の子が転んで大泣きするでしょう。生まれたばかりの妹に会いに来ていたその少女は、なかなか泣き止みませんが、父親の肩車で落ち着くはずです。それから二つ目。看護師が息子さんを連れてこの部屋に戻った際、息子さんがやけに左手ばかりを動かすので、ひょっとしたら左利きになるんじゃないかという話になります。看護師には、左利きで羨ましいといった旨の発言があります。三つ目は……おそらく本日、医師から何らかの宣告があるかと思われます。そして明日以降、詳細な検査の予定となるはずです』


『宣告……、検査……』


ある程度は覚悟していたはずなのに、いざ現実に近付いてこられると、やはり怯んでしまう。
そしてそれは彬くんも同じだったようだった。










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