今宵、ロマンチスト達ここに集いて
『でもそういえば、アヤセさんも、昔、俺にロマンチックっぽいこと言ってましたよね?』
『そうでしたか?』
矛先を向けられて、アヤセさんは、はて?といった感じに問い返した。
『ほら、高校生だった俺がはじめて過去に戻ったとき、子供だった千代と一緒に……覚えてないですか?俺、その頃はアヤセさんのこと叔父さんだと思ってたから、ロマンチスト気質なのは遺伝なのかもって、千代にそう話したくらいなんですよ?』
そう言えばそんなこともあったかなと、わたしは高校時代の記憶を紐解きたくもなるが、今ここでそんなことをしてる時間がないのが口惜しい。
『そうだったんですか。確かに何か言葉を交わした記憶はありますが、詳しい内容までは……。家族も仕事仲間にも周りにはロマンチストやらキザなタイプやらが大勢いますから、特段、自分がそうだとは思ったことはありませんでした。叔父から甥への遺伝でなくて、がっかりさせてしまったなら申し訳ありませんでした』
どうやらアヤセさんは自分ではその自覚はないらしい。
そんなことは他愛もないことという態度で、ロマンチスト談義を受け流してしまう。
『……ですが、いつか息子さんと会えたとき、息子さんがそうなのかどうか、うまく確かめられるといいですね。数年、あるいは数十年後の再会が、それこそロマンチックなものになるよう、祈ってます。そのためにも、息子さんのことは、全力で守って育てることを誓いますので、どうかお二人は、それまでお元気でいらしてください』
彬くんほどではないにしても、アヤセさんの言葉選びとか、話し方とかに、どことなくロマンチストの片鱗みたいなものを感じたけれど、それを広げることはできなかった。
なぜなら、続けてアヤセさんがとうとう口にしたのだ。
『では、そろそろ…』