今宵、ロマンチスト達ここに集いて
「一晩?」
案の定、前崎さんは驚いた声を返してきて、私の後悔と反省は濃さを増していく。
けれど、
「……ということは、岸里さんがここにお泊りしてくれるということかしら?」
意外そうに、前崎さんが首を傾げた。
そこに訝る調子や、理由を気にする様子はない。
私はここぞとばかりに、
「そうです!よろしいですか?あ、もちろん病院側の了承はもらってます。前崎さんさえよければ……ですが」
ずいっと前崎さんのもとに大股で歩み寄った。
病院側の了承と言うのは口から出まかせではない。実際に、しかるべき部署に許可は得ている。
特別室を出てすぐに病院側の窓口に申請すると、思いの外、すんなりとOKが出たのだ。
それが、前崎さんの余命のせいなのか否かまでは、私には分からないけれど。
前崎さんは、やや早口で訴えた私を包み込むように、あのホットミルクのような、柔らかい笑い顔を見せてくれた。
「もちろんよ。嬉しいわ」
突然の申し出に不審がる素振りもなくて、むしろそれを喜んでくれているように見えて、私はフゥ…と安堵の息をこぼしていた。