今宵、ロマンチスト達ここに集いて




三人の語らいが一段落してきた頃、文世さんが「さて、他にご質問はありませんか?」と尋ねた。

「もちろん、まだ訊きたいことはたくさんあるわ。もし息子と再会できたら、お父さんに似てロマンチストなのか訊きたかったし、生まれた時は左手をよく動かしてたから、左利きになってるのかも確かめたいと思ってたのよ?」

あの夜(・・・)も、そのようなことを仰ってましたね」

文世さんは思い返すようにしみじみと返した。

「そうね。文世さんはロマンチストだって、彬くんはあの時にそう言ってたわね。まさか自分達の息子だと知らずに……」

「昔は、俺のロマンチストは叔父に似たんだって言ってたっけ。でも実際は真逆だったわけだ」

「そうですね。ああ、利き手のご質問ですが、私は両利きです。はじめは左利きだったようですが、養父母が右も使えるように訓練してくれたそうです」

「まあ、それは感謝しなくてはね」

「ええ。まだまだ右利き優勢の世界ですからね。……他にはありませんか?」

再び問いかけた文世さんに、今度は彬文さんが「そういえば……」と、ふと疑問が浮かび上がったように、何とはなしに投げかけたのだった。


「てっきり ”アヤセ” というのが苗字だと思ってたんだが、それが下の名前だったということは、お前の苗字は何なんだ?」








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